第4章 練習問題4 4.10

■(1)直径dの円形断面の場合
 
 ro=d/2, (4.10)の定義式から
 Zp=J/(d/2)から
 となる。
  
■(2)外径d ,内径dの中空円形断面の場合
 
 円形断面の場合の積分区間を, di/2 からdo/2に変えればよい。
 
 
 
Zp=J/(do/2)から
 となる。
 
練習問題9
 
■9.1 図9.3 の荷重ー伸び曲線で,AからEまでの変形過程において試験片に生じている現象を順を追って説明せよ。


図9.3 引張試験から得られる荷重ー伸び曲線 SS400
 
A点はすべりの開始点であり,試験片のR部の平行部近傍から,最初のすべりが発生する。
B点は降伏後,最低荷重を示す点であるが,すべりが続いている。
C点は,試験片全体にすべりが広がり,完了した点である。この点以降,転位が増殖し,移動困難になり,さらに変形させるためには,より大きな荷重が必要とされる。ひずみ硬化の現象がD点まで続く。
D点は,試験片の一部に局部変形(ネッキング)が生じ始める点で,以後の変形はここに集中する。その後試験片は細くなりE点で破断する。
 *微視的な変形は,別ページ「材料の強度と破壊」を参照してください。
  
■9.2 次の語句を説明せよ。 詳細は別ページ材料の強度と破壊を参照して下さい
 
(1) 標線間距離
 引張試験片の平行部に基準となる標線をけがく。JIS2号試験片では直径の8倍の大きさと間隔が決められている。この標線の間隔の大きさを言う。この長さは伸びの測定の基準となるものである。この長さを用いてひずみを計算する。
 
(2) 延性材料
 変形しやすい材料で,十分塑性変形した後に破断する。外見はカッブアンドコーンの様相を呈する。伸びeが大きいほどこの性質が大きい。FCC金属のアルミや金,銅などは箔に加工することができる。
 
(3) ぜい性材料
 もろい材料で,破断までほとんど塑性変形しない。破断面は平滑である。ガラス,鋳鉄などがこの材料である。
 
(4) 断面収縮率
 破断前の断面積Aと破断後の断面積Aを測定し,変化量ΔAを変形前の断面積Aで割り、その値を%で表した量で,断面積がどの程度変化したかを示すものである。この値が小さいほどぜい性であることを示す。
 
(5) 低温ぜい性破壊
 温度が低下したときに生ずるぜい性破壊をいう。たいていの材料の場合,室温では延性を示しても温度が低下するとぜい性に変化する。
 
(6) 衝撃吸収エネルギー
 シャルピー衝撃試験において,破壊時に吸収されたエネルギーである。この値が大きいほど延性であり,小さいほどぜい性である。
 
(7) 延性破壊
 室温での引張試験における低炭素鋼の破壊で,十分な塑性変形をした後で破壊し、室温の低炭素鋼,銅,アルミなどの面心立方構造の金属,これらの材料の引張試験で見られる破壊。破断面はカップ・アンド・コーン形を示し,肉眼でみると,鈍い灰色をしている。破面の電子顕微鏡写真では繊維状を呈し,えくぼ状模様(ディンプル,dimple)が観察される
 
(8)ディンプル
 延性破壊をした材料の破面を電子顕微鏡観察したとき見られるえくぼ模様である。 引張試験の最大荷重点でくびれが生ずる付近で,介在物や析出物等に転位が集積し,応力集中のため,微視き裂ができたり,介在物が割れたり、介在物と母材のヤング係数の差などから空孔ができる。空孔が連結し,き裂となって成長する。空孔の痕跡がディンプルとなって残る。
 
(9) リバーパターン
 脆性破壊を起こした破面に生ずる典型的なパターンで、へき開面上でき裂の伝播方向に生ずる川模様である。
 
(10) 耐久限度
 S-N曲線を求めると、鉄鋼などでは、繰り返し荷重を与えても破断しない応力振幅が存在し、この大きさを耐久限度と呼ぶ。鉄鋼の場合は,ある応力振幅以下では,無限の繰り返し数に耐える。この応力振幅を 耐久限度(endurance limit )と言う。
 
(11) ストライエーション
 疲労破面に特有な縞模様のことである。き裂先端での不可逆的なすべり変形により生ずると説明されている。
 
(12) S-N 曲線
 応力振幅Sと破断までの繰り返し数Nの関係はある曲線によって表すことができ,これをSーN曲線という。
 
(13) 応力腐食割れ
  金属が一定の引張応力の下で特定の腐食環境に置かれると一定時間後に割れを生じ破壊する。一定応力は外荷重でも冷問加工,溶接や熱処理による残留応力でも同様である。
 応力条件下においては,無負荷状態における通常の腐食を加速させるが、これは、孔食の発生により,応力集中が生じ、さらに,転位の移動によるすべりの発生,表面酸化膜の破壊,すべりにより新たに環境にさらされていない金属表面の出現等が繰り返される。これらの現象が腐食を加速させる原因になっている。
 
(14) 延性−ぜい性遷移温度
  温度が低下するにつれて,延性破壊の特徴である繊維状破面が減少し始める。降伏応力は増加する。局部収縮を伴うが,破壊は試験片中央の局部収縮部に繊維状クラックとして発生し,これが環状をなしたへき開型に変化してついに全体の破壊にいたる。繊維状クラックの割合が破面の50 %に相当する温度を延性遷移温度Tdという。延性からぜい性に材料の性質が変化する温度である。