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酸環境の影響 --- PC材の場合
 3.5%HCl水溶液中における疲労試験結果を示す.あわせて空気中での疲労試験結果も示した.空気中での試験結果と比較すると疲労寿命はかなり低下している.空気中のS−N曲線は,高応力振幅においてはせん断き裂支配型,低応力振幅においては,表面クレイズ支配型になる変形機構の相違から,逆S字形を示し,寿命の逆転現象が生ずることを前節において述べた.3.5%HCl水溶液中での疲労試験結果は,はっきりとしたそのような傾向は示さない.
 
3.5%HCl水溶液中におけるPC材のS−N曲線 表面クレイズの発生,PC材,σa=25MPa,  
Wf =1%,3.5%HCl水溶液中
表面クレイズの発生,PC材,σa=25MPa, Wf =1%,3.5%HCl水溶液中 表面クレイズから成長したせん断き裂,PC材
破面写真,PC材,σa=15MPa,Wf=1%,3.5%HCl水溶液中
表面クレイズから成長した疲労き裂
疲労破面における繊維近傍の様相,     
     PC材,σa=15MPa,Wf=1%,3.5%HCl水溶液中
腐食されたガラス繊維,PC材,σa=15MPa,Wf=1%,
3.5%HCl水溶液中
タイプBの破面 縦割れが生じた破面

 PC材の場合は,試験片表面に表面クレイズが発生し,負荷方向と垂直なクレイズ部が疲労き裂に成長する.クレイズ先端部に発生したボイドを伴うせん断き裂は余り深くは成長しない.き裂伝播と繊維の破壊の様相はAS材におけるタイプA,A’である.空気中では発生しなかった表面クレイズの発生と3.5%HCl水溶液中でのSGFの応力腐食割れが生じ,き裂伝播速度を大きくすることが疲労寿命を低下させる原因と思われる.

 応力下においては,PC材も酸により腐食を受けることが判明した。
表面クレイズの発生,PC材3.5%HCl水溶液中 表面クレイズ先端領域でのPC材の腐食
応力集中領域に生じた網目状のき裂
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